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八王子市みなみ野にある「日野オートプラザ」に行ってきました。(2019年5月)

日野オートプラザは日野自動車の研修施設である「日野自動車21世紀センター」に併設された企業博物館であり、ここでは日野自動車の生産車両やエンジン、日野自動車に関する各種資料など多くの展示物を見ることができます。

ちなみに日本のトラック・バス業界最大手である日野自動車の前身は「東京瓦斯電気工業株式会社」(略称:瓦斯電 = がすでん)という会社なのですが、日野オートプラザでは東京瓦斯電気工業株式会社から始まり、現在の日野自動車に至るまでの歴史の変遷についても詳しくパネル展示が行われています。

なお日野オートプラザは入場は無料ですが、団体で入場する場合は、事前の連絡が必要ですのでご注意ください。
また、開館日、その他の詳細については日野自動車のWebサイトをご覧になるとよいと思います。



日野自動車の生産車両


日野オートプラザ1階には日野自動車が生産した各種車両が展示されています。
日野自動車というと現在では大型トラックやバスの製造メーカーというイメージがありますが、昔は乗用車の製造も行っていて、かつて日野自動車が生産していた乗用車も日野オートプラザで見ることができます。




ちよだEC型エンジン


「ちよだEC型エンジン」は日野自動車の前身の「東京瓦斯電気工業株式会社」(略称:瓦斯電 = がすでん)が昭和12年(1937年)に製造した空冷ディーゼルエンジンであり、主に軽戦車用に開発されたものと推定されています。

日野オートプラザに展示されている「ちよだEC型エンジン」は東京学芸大学の古い倉庫から2001年に見つかったものですが、東京学芸大学の敷地(小金井市)には、かつて多摩陸軍技術研究所という軍の諸兵器に関する基礎技術の研究機関があったそうで、このエンジンは1945年に試作車が1輌だけ完成したと伝えられる五式軽戦車用のものである可能性があるようです。(ただし真偽についてはやはり不明です。)



【 主要諸元 (ちよだEC型エンジン) 】


形  式直列6気筒 空冷ディーゼルエンジン
総排気量9.3リッター
圧縮比率16:1
重  量729 kg
出  力130馬力/2000rpm(推定値) ルーツ過給で150馬力/2000rpm(推定値)




中島「光」三型 エンジン


光エンジンは、米ライト社のR-1820「サイクロン」エンジンを参考にして中島飛行機(現在のSUBARU社)が開発、製造した航空機用の空冷星型エンジンです。1936年には海軍から光エンジンの一型、二型が制式採用されています。

日野オートプラザに展示されている光エンジンは発展型の「三型」と呼ばれるタイプで、1937年に海軍から正式採用され、旧日本海軍の九七式艦上攻撃機(一一型)に搭載されました。
ただし九七式艦上攻撃機のエンジンには当時まだ開発中であった同じ中島製の「栄」エンジンの搭載をもともと予定しており、光エンジン三型はより高出力の「栄」エンジン搭載の九七式艦上攻撃機(一二型)までのつなぎの役割でありました。



【 主要諸元 (中島「光」三型 エンジン) 】


形  式空冷星型9気筒
筒  径160 mm
行  程180 mm
総排気量32.6 L
全  長1,425 mm
外  径1,375 mm
乾燥重量487.6 kg
燃料供給気化器式
過  給遠心式1段1速過給機
最高出力650ps /1,900 rpm




川崎「ハ9Ⅱ乙」エンジン


ハ9Ⅱエンジンは1930年代後半に川崎航空機が製造した航空機用液冷V型12気筒エンジンです。
このエンジンはドイツの「BMW VI」エンジンを川崎航空機でライセンス生産したBMW-6エンジンをもとにして川崎航空機が独自の改良を重ねた結果の最終発展型エンジンとなります。

ハ9Ⅱエンジンには、甲型、乙型、丙型があり、日野オートプラザに展示されているハ9Ⅱエンジンは乙型です。
ハ9Ⅱ乙エンジンは旧日本陸軍の九八式軽爆撃機などに搭載されました。
またこのハ9Ⅱ乙エンジンを長距離飛行用に改造したエンジンが「航研機」と呼ばれる航空機に搭載され、1938年に周回飛行距離の世界記録を達成しています。



【 主要諸元 (川崎「ハ9Ⅱ乙」エンジン) 】


形  式液冷V型12気筒
筒  径160 mm
行  程170 mm
総排気量42.4 L
圧縮比率6.5
出  力870 馬力 /1,850 rpm
全  長2,150 mm
全  幅780 mm
乾燥重量580 kg




航研機


日野オートプラザには日野自動車と関わりの深い「航研機」についての展示も行われています。
航研機は1938年に周回航続距離の世界記録を樹立した日本の長距離飛行研究機です。東京帝国大学航空研究所(航研)が設計を行い、実際の機体製作を日野自動車の前身である東京瓦斯電気工業が担当しました。

航研機は1937年3月に完成、1937年5月に羽田空港で初飛行を行い、1937年11月13日には初めての周回飛行を行いましたが、これは脚引込装置の故障によって中断。翌年の1938年5月10日には2度目の周回飛行を試みましたが、飛行中に自動操縦装置が故障し、10時間21分の飛行後、木更津に着陸しています。そしてその3日後の5月13日に再度、周回飛行が実施されました。

千葉県木更津の飛行場を飛び立った航研機は、関東地区の木更津-銚子-太田-平塚の4地点を結ぶ区間を3日間かけて29周し、1万1651kmの連続無着陸飛行に成功、3度目の周回飛行で航研機はついに当時の周回飛行距離の世界新記録を達成しました。(所要時間は62時間23分、平均速度は186.2kmでした。)

日本が航空の分野で世界記録を樹立したのはこれが初めてのことであり、 世界記録の快挙を達成した航研機は同年、国際航空連盟(FAI)から公認証書を贈られています。



【 主要諸元 (航研機) 】


全  幅27.93 m
全  長15.06 m
全  高3.6 m
主翼面積87.3 平方メートル
機体重量4,225 kg
最大重量9,216 kg
胴  体全金属セミ・モノコック構造
主  翼金属製骨組み羽布張り塗装仕上げ、付け根部金属外皮
エンジン川崎「ハ9Ⅱ乙」液冷V型12気筒の改造型
最大速度245 km /時
巡航速度196 km /時
上昇限度3,410 m
航続距離12,500 km
乗  員3名


日野オートプラザには日野自動車の前身である東京瓦斯電気工業が機体製作を行った 「航研機」の模型も展示されています。(左の4枚の写真参照)

航研機は縦横比(アスペクト比)の大きな主翼と細長い胴体をもつ単発単葉機で長距離を飛行する為に機体総重量の半分近くを燃料が占めていました。

航研機には飛行中の空気抵抗を極力減らす様々な工夫もされていて主脚は離陸後、機体に収納する引込脚になっており、これは長距離飛行実験機としては世界初の試みでした。
また操縦者は離着陸のときだけ開放操縦席から顔を出し、水平飛行中は座席を下げて胴体内に引き込み、ガラスのふたを閉めるようにもなっていました。
(その結果、空気抵抗は減りますが、水平飛行中はパイロットは前方が見えないので機体左右の窓を見ながら操縦するようになっていました。)

なお航研機の主翼などは展示されている模型のように赤く塗られていましたが、これは不時着時の発見を容易にする為のものでした。

日野オートプラザには川崎航空機の「ハ9Ⅱ乙」エンジンが展示されていますが、航研機にはこの「ハ9Ⅱ乙」エンジンを長距離飛行用に改造したエンジンが載せられていました。
ベースの「ハ9Ⅱ乙」エンジンから航研機用エンジンへの改造点はいくつかありますが、 例として下記のような改造が行われました。
  • 過給機(スーパーチャージャー)の撤去
  • 航研機は長距離飛行用の実験機であり、低高度でしか飛行しないので、高高度を飛行するときに使用する過給機は不要であり、ベースエンジンの「ハ9Ⅱ乙」から過給機は撤去しました。

  • 希薄燃焼(リーンバーン)対応
  • ガソリンエンジンの場合、エンジンのシリンダー内での空気と燃料の混合比率は 14.7 対 1 が適正とされています。希薄燃焼(リーンバーン)はこの混合比よりも薄い混合気でエンジンを運転するもので、これにより燃費の向上が可能となります。基礎研究を経て、東京帝国大学航空研究所がベースエンジン「ハ9Ⅱ乙」の希薄燃焼(リーンバーン)に成功し、その結果エンジンの燃費が向上するようになって、長距離飛行に有利な低燃費エンジンが実現しました。

  • 排気弁の熱損傷対策
  • 上述のエンジンの希薄燃焼化は燃費の向上をもたらしましたが、希薄燃焼化に伴いエンジンの排気温度が高くなり、それによって排気弁が損傷してしまうことを防ぐため、排気弁を冷却する必要が生じるようになりました。この対策としてベースエンジン「ハ9Ⅱ乙」の排気弁を中空の空気冷却弁とすることとし、その中空の空気冷却弁に冷却空気を送風する「ルーツブロワー」を日野自動車の前身である東京瓦斯電気工業が設計・製造し、これが航研機のエンジンに装備されました。
日野オートプラザに展示されている川崎「ハ9Ⅱ乙」エンジン(=航研機のベースエンジンと同型のエンジン)
日野オートプラザに展示されている川崎「ハ9Ⅱ乙」エンジンの説明パネル
日野オートプラザに展示されている航研機の「エンジン改造内容」の説明パネル
日野自動車の前身である東京瓦斯電気工業が設計・製造し、排気弁冷却の為、航研機のエンジンに搭載された「ルーツブロワー」の説明パネル


日野オートプラザへのアクセス



JR横浜線八王子みなみ野駅の京王バス2番乗り場で「みなみ野循環」に乗車→ 「みなみ野五丁目南」停留所にて下車後、徒歩約5分。(日野自動車のWebサイトより)

バスも運行していますが、八王子みなみ野駅から徒歩でもよいと思います。
(実際、私は日野オートプラザまで駅から歩いていきました。)






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