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▲F1マシン Tyrrell P34(実物)
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模型メーカーの「タミヤ」(本社:静岡市)が運営する「TAMIYA PLAMODEL FACTORY TOKYO」でF1レーシングマシン「Tyrrel(ティレルまたはタイレル)P34」の実車展示が行われていることを知り、見学に行ってきました。「TAMIYA PLAMODEL FACTORY TOKYO」はタミヤが直接運営している東京・新橋にある施設です。施設のオープン1周年を記念して「Tyrrel P34」の展示を期間限定で行うことになったそうです。ありがたいことに施設の入場・見学は無料となっていました。展示期間は2025年の5月20日(火)から6月30日(月)まででしたが、これが大変好評だったようで期間の延長が行われ、7月以降もしばらく展示が継続されていました。実物のF1マシンを見るのは私は今回が初めての経験でありましたので興味津々。新橋の展示会場へといそいそと出かけて参りました。以下にその見学内容をご紹介いたしますのでどうぞご覧ください。



 Tyrrell P34 の展示

▲展示されていた Tyrrell P34



「Tyrrel P34」の登場は1976年でした。かつてのF1マシンですが、特筆すべき点はF1の歴史において唯一の6輪車であったことです。通常前輪は2つですが「Tyrrel P34」は何と前輪が4つあります。前輪の大きさを小さくすることで走行時の空気抵抗を減らすことができ、かつ前輪が4つに増えたことによりタイヤの接地面積が増大、タイヤのグリップ力もより増やすことができます。6輪車にすることで直線スピードの向上のみならず、良好なコーナリング、強力なブレーキング性能も合わせて実現しました。

6輪車「Tyrrel P34」は単に奇をてらったF1マシンではなく、1976年のF1第7戦スウェーデンGPでは1-2フィニッシュを果たすなど実力を伴った高性能マシンでもありました。F1デビューした1976年のシーズンにおいて「Tyrrel P34」は下表のように多くの表彰台順位(3位以上)を獲得し、F1チームの成績を評価する指標であるコンストラクターズランキングでも3位という好成績を収めています。実績においても優秀なF1マシンであったと言えるでしょう。


● Tyrrell P34 の主な戦績(1976年)

グランプリ 開催国 順位 ドライバー名
第1戦 ブラジル 2位 パトリック・デパイユ
第3戦 アメリカ 3位 パトリック・デパイユ
第6戦 モナコ 2位 ジョディー・シェクター
3位 パトリック・デパイユ
第7戦 スウェーデン 1位(優勝 ジョディー・シェクター
2位 パトリック・デパイユ
第8戦 フランス 2位 パトリック・デパイユ
第9戦 イギリス 2位 ジョディー・シェクター
第11戦 ドイツ 2位 ジョディー・シェクター
第14戦 カナダ 2位 パトリック・デパイユ
第15戦 アメリカ 2位 ジョディー・シェクター
第16戦 日本 2位 パトリック・デパイユ




●フロントタイヤ挙動確認用の小窓

6輪車にはメリットがある反面、機構的には複雑になり、通常の4輪車と比べるとトラブルの発生確率は高くなります。「Tyrrell P34」は前輪が4つあるのでフロントタイヤの挙動には特に注意する必要があります。この為、ドライバーからフロントタイヤの状況を確認できるようコクピット(操縦席)の左右にフロントタイヤ挙動確認用の小窓が設けられています。



●ブレーキ冷却用空気の取り入れ口

F1マシンではブレーキにディスクブレーキが使われています。ディスクブレーキでは減速のためドライバーがブレーキペダルを踏むと「ブレーキキャリパー」と呼ばれる装置の中の「ブレーキパッド」が「ブレーキディスク」を挟み、その摩擦でマシンの減速が行われます。

ただし極限状態の走行を行うF1レースではブレーキが大変な高温になります。たとえば高速サーキットの直線コースではF1マシンの速度は時速300㎞以上に達することもあります。そのような高い速度から急減な減速を頻繁に行うF1レースではブレーキング時にブレーキ装置で発生する摩擦も大変なもので「ブレーキディスク」や「ブレーキパッド」などの部品は何と1000℃以上もの高温になってしまいます。

これに耐えられるよう、F1マシンの「ブレーキディスク」や「ブレーキパッド」には「カーボン複合材」が1980年代ぐらいから使われています。カーボン複合材にも色々な種類がありますが、F1マシンで使われるのは「カーボンカーボン複合材」(Carbon-Carbon composite)と呼ばれるものであり、通常の金属では耐えられない熱に耐えられ、衝撃に強い特性をもっています。

とは言えカーボン複合材の耐熱温度にも限界があるので、「ブレーキディスク」や「ブレーキパッド」を冷却しなければなりません。(なお「Tyrrel P34」は1970年代のF1マシンなのでブレーキに使われた素材は鋳鉄の可能性が高いと思われますが、やはり冷却は必要であり、かつ重要です。)

冷却のためには積極的に走行風を取り込む必要があります。ブレーキダクトと呼ばれる空気取り入れ口からブレーキ冷却用の空気を取り込み、それを用いてブレーキの冷却を行います。

ここで6輪車の「Tyrrel P34」の場合に問題となるのが、前輪ブレーキの冷却です。通常の4輪マシンと異なり6輪車の「Tyrrel P34」では前輪が4つあり、前列の前輪(2つ)のブレーキ冷却用空気は車体前面のブレーキダクトから取り込むことができます。(写真ので囲んだ部分が前列タイヤ用のブレーキダクトです。)

しかし後列の前輪(2つ)の冷却用空気はそのままではうまく取り込むことができません。そこで後列の前輪ブレーキも十分に冷却するため「Tyrrel P34」ではブレーキダクトを増設しています。写真ので囲った部分が増設したブレーキダクトで、これにより後列の前輪ブレーキも確実に冷却できるようにしています。

なお身の回りにある自動車でも通常、前輪にはディスクブレーキが使われています。やはりブレーキの冷却は必要ですが、ただF1のようにブレーキがとてつもない高温になることは普通は無いので、F1マシンに比べれば簡易的な冷却構造になっています。具体的には多く場合「ベンチレイティッドディスク」というタイプのディスクブレーキが通常の自動車で使われています。「ベンチレイティッドディスク」は2枚のディスクの間にフィンが挟まれていて、そこに走行による自然通風の空気が抜けていくことで冷却を行います。ブレーキディスクやブレーキパッドの素材もF1マシンとは違い、通常の自動車では鋳鉄などが使われていて、耐熱温度も数百℃程度(通常は200~400℃)です。



●コクピット右側のバルジ

コクピット(操縦席)右側の小窓の下には「バルジ(bulge)」(=ふくらみ)があります。これはコクピット内の右側にシフトレバーがあり、その操作をドライバーがし易くする為に、シフトレバー付近だけをふくらませています。空気抵抗を少しでも減らすように、ふくらんだ部分は流線形にしてあります。



●フォード・コスワース・DFVエンジン

「Tyrrell P34」に搭載された「フォード・コスワース・DFV」エンジンはF1レースにおいて通算155勝をあげた名エンジンです。コスワースは1958年創業のイギリスのレーシングエンジンビルダーであり、フォード社から主に開発費などの支援を受けていました。それにより、エンジンには「フォード・コスワース」と2つの名前が使われています。軽量でコンパクト、なおかつ低燃費のエンジンであり、1970年代を中心にティレル以外にも多くのF1チームがこのエンジンを採用しました。

【 フォード・コスワース・DFVエンジン(後期)スペック 】

名称:フォード・コスワース・DFV
形式:90度V型8気筒(DOHC 4バルブ、自然吸気)
ボア × ストローク:85.6 × 64.8 ㎜
排気量:2993 ㏄
最大出力:510hp/11200rpm
最大トルク:37.3 kg・m/9000rpm
重量:154kg



 TAMIYA PLAMODEL FACTORY アクセス

▲「TAMIYA PLAMODEL FACTORY」の場所

TAMIYA PLAMODEL FACTORY TOKYO」は「タミヤの今が、ここにある。」をひとつの大きなコンセプトにしています。ここには最新のプラモデルやミニ四駆などの製品が揃っていて、模型文化を世界に発信するタミヤ社のまさにフラッグシップ拠点となっています。また市販のタミヤ製品のみならず、タミヤオリジナルのペンケース、キーホルダー、ステッカー、タンブラー、Tシャツなどの販売も行われています。カフェスペースもあり、ソフトドリンクがタミヤオリジナルカップで提供されています。アクセスはJR新橋駅の烏森口から徒歩5分、東京メトロ銀座線新橋駅の8番出口から徒歩5分、都営浅草線新橋駅のA1出口から徒歩5分、都営三田線内幸町駅A1出口から徒歩7分となっています。(「TAMIYA PLAMODEL FACTORY TOKYO」ホームページより)

営業時間は、平日(月~金)11:00~20:00、土・日・祝祭日は10:00~19:00ですが、これもホームページ等で事前に確認しておくと良いと思います。



 Tyrrell P34 見学後記

今回東京・新橋の「TAMIYA PLAMODEL FACTORY TOKYO」で見学した「Tyrrel P34」(実物)は普段は静岡県のタミヤ本社ロビーに保管・展示されているものです。関東在住ではなかなか見ることが難しいのですが、これを東京で見られる機会を得ることができ、今回F1マシンを見るのも初めてということもあってとても良い見学となりました。「Tyrrel P34」はもうかれこれ約50年前のF1マシンですが、タミヤ社の保有する車体は保存状態も良くその点もまた素晴らしいものでした。

「Tyrrel P34」のデビュー後、他のチームでも6輪F1マシンの検討が行われましたが、実現はしませんでした。また6輪車は理論的には正しいものの、タイヤメーカーは4輪車用のタイヤの開発を優先していて、6輪車用の小型前輪タイヤの供給は停滞気味でした。F1のレースタイヤはどんどん進歩し高性能化するのですが、供給の関係で最新の高性能タイヤを前輪に装備することが難しいことなどがあり、Tyrrel チームは6輪車をあきらめ、4輪車へと路線変更を行いました。更に1983年にはF1のレギュレーション(車両規定)の改正が行われ、「車輪は4輪まで」と規定された為、結局F1レースで実際に戦った6輪車はあとにも先にも「Tyrrel P34」のみとなりました。現存する車両は世界でも数台であり、そのような貴重なF1マシン「Tyrrel P34」を今回見ることが出来たのは大変有意義な経験でありました。また機会があればぜひとも見学に行きたいと思います。




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