●一式双発高等練習機の展示
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立川飛行機を前身とする「立飛ホールディングス」(東京都立川市)で旧陸軍の「一式双発高等練習機」の2回目となる一般公開(入場無料)が行われ、その見学に行ってきました。(2022年10月)

一式双発高等練習機は、立川飛行機(現在の立飛ホールディングス)によって開発、生産された旧日本陸軍の双発練習機です。(双発とはエンジンを2基持つ航空機のことを意味しています。) 一式双発高等練習機は立川飛行機が初めて手掛けた引き込み脚の全金属製双発機でありましたが、開発作業は順調に進み、試作機は1940年に完成しています。審査結果は良好だったため若干の機体改修の後、1941年に一式双発高等練習機として陸軍に制式採用されました。 なお一式双発高等練習機は旧陸軍のおける試作名称(計画名称)で「キ54」と呼ばれることもあります。

また今回は前回の一般公開と異なり、立川飛行機が過去に製作し、その後「立飛ホールディングス」によって復元された「R-53」「R-HM」という2種類の軽飛行機も同時に公開されました。



●会場で配布されていた一般公開のチラシ(おもて面)

●会場で配布されていた一般公開のチラシ(うら面)


1.一式双発高等練習機 の展示

●会場に展示されていた一式双発高等練習機の模型

一式双発高等練習機は立川飛行機(現立飛ホールディングス)によって開発、生産された練習機です。同機は信頼性の高いエンジンや耐久性に優れた機体を持ち、操縦席からの視界も良好で使い勝手の良い傑作機でありました。そのため操縦・航法練習機型の甲型(今回展示機)以外にも、通信・爆撃練習機型の乙型、輸送機型の丙型、哨戒機型の丁型も生産され、連絡機としても使用されました。生産は1945年6月まで行われ、合計1,342機が生産されています。

戦後、国内に現存する一式双発高等練習機は無いものと思われていましたが、戦時中エンジントラブルにより十和田湖に不時着し沈没した一式双発高等練習機の存在が記録資料から明らかになりました。2010年に調査会社によって湖底に沈んだ一式双発高等練習機が発見され、2012年にはついにその機体の引き揚げに成功しました。十和田湖の湖底は低温で淡水のため、60年以上経っても機体の腐食は比較的少なく、機体の塗装なども当時の状態で残っていました。

この機体は国内に現存する唯一の一式双発高等練習機として青森県立三沢航空科学館にしばらく展示されていたのですが、維持、管理などの問題から2020年11月、一式双発高等練習機の製造元である立飛ホールディングス(前立川飛行機)に譲渡されることになりました。これにより一式双発高等練習機のいわば「里帰り」が実現し、立飛ホールディングスでの一般公開(今回で2回目)の運びとなりました。



【 一式双発高等練習機 の主要諸元 】


全  長11.94 m
全  幅17.9 m
全  高3.58 m
主翼面積40 ㎡
自  重3,120 kg
全備重量4,080 kg
エンジン日立 ハ13甲 空冷星型9気筒エンジン(515HP)×2
最大速度367 km/h
航続距離960 km
上昇限度7,180 m
乗  員5~9名


世界を見渡しても一式双発高等練習機の現存機は少なく、現在のところ中国に1機(北京航空航天大学内の北京航空館)、オーストラリアに1機(キャンベラのオーストラリア戦争記念館)しかその存在が確認されていません。そういったこともあり、今回公開された一式双発高等練習機はその希少性から2016(平成28)には重要航空遺産にも認定されています。

なお今回の展示は前回同様、一式双発高等練習機は組み立てられた状態ではなく、胴体、左右主翼、水平尾翼、垂直尾翼がそれぞれ個別に展示されていました。(ちなみに以前、同機が青森県立三沢航空科学館で展示されていたときは組み立てられた状態での展示でした。)また同機は十和田湖から引き揚げられたものですが、前述の通り、機体が沈んでいた湖が淡水で湖底の水温も低かったことから機体はあまり劣化していない状態であり、機体の塗装も湖に沈んだ当時のままに近く、胴体や主翼の日の丸もオリジナルの色がかなり残っています。








●天風エンジン(ハ13)
一式双発高等練習機に搭載されていたハ13エンジンは通称「天風(あまかぜ)」と呼ばれるものでした。単列星型9気筒の空冷エンジンで乾燥重量320 kg、総排気量17.9 L、離昇出力は510馬力を発生しました。写真の天風エンジンは十和田湖から引き上げた一式双発高等練習機の主翼左側に付いていたエンジンであり、日野自動車工業が修復しました。
●キャブレター
キャブレターはエンジンの各シリンダーに、ガソリンと空気を混ぜた混合気を供給する装置です。写真のキャブレターは一式双発高等練習機の天風(あまかぜ)エンジンのものであり、やはり日野自動車工業が修復作業を行いました。
●「重要航空遺産」の表彰楯
一般財団法人「日本航空協会」から立飛ホールディングスに贈られた「重要航空遺産」の表彰楯(ひょうしょうたて)。一式双発高等練習機の歴史的および文化的な価値を表彰しています。(前回の一般公開では展示されていませんでした。)

ちなみにその他の「重要航空遺産」としては戦後初めての国産旅客機であるYS-11(国立科学博物館所有)などが認定されています。
●「重要航空遺産」の認定書
一式双発高等練習機が「重要航空遺産」であることが認定されています。(これも前回の一般公開では展示されていませんでした。)


 


2.R-53 軽飛行機 の展示

●R-53 軽飛行機 の展示

R-53は新立川航空機(現立飛ホールディングス)よって製作された戦後初の国産飛行機であるR-52を改良した軽飛行機です。1953年(昭和28年)に製作されました。機体設計は基本的にR-52と同じで、エンジンがイギリス製のシラス・メジャー(155hp)に換装されています。R-53は全日本学生飛行連盟に貸与され、日本一周飛行に参加し耐久性の高さを示しましたが、購入先は残念ながら現われませんでした。 その後、R-53は一旦、航空大学校での練習機として使用され、1957年に新立川航空機(現立飛ホールディングス)に返却されました。



【 R-53 軽飛行機 の主要諸元 】


乗  員パイロット1又は2名
座  席2席
全  長7.5 m
全  幅10.7 m
全  高2.65 m
主翼面積17.30 ㎡
最大重量1,000 ㎏
エンジンブラックバーン シラス・メジャーIII 空冷倒立直列4気筒レシプロエンジン(155 HP)
最大速度207 km/h
上昇限度4,500 m





3.R-HM 軽飛行機 の展示

●R-HM 軽飛行機 の展示


R-HMは1954年(昭和29年)にフランス人技師アンリ・ミニエの指導のもと新立川航空機(現立飛ホールディングス)によって試作された軽飛行機です。同年10月に初飛行に成功しています。(新立川航空機としてはこのR-HMを海外の飛行場が未整備の国に輸出することを考えていました。)

R-HMは串型翼配置を採用していて、前翼の角度の変化と方向舵(ラダー)を操作することで操縦を行います。通常の飛行機にある昇降舵(エレベーター)と補助翼(エルロン)は無く、実際の操縦はかなり難しいものでした。そのため結局量産には至らず、試作機(1機)のみの製作に終わりました。



【 R-HM 軽飛行機の主要諸元 】


乗  員パイロット1又は2名
座  席2席
全  長5.80 m
全  幅8.00 m
全  高2.00 m
主翼面積前翼:11.06 ㎡ 後翼:7.66㎡
空虚重量413 ㎏
全備重量645 ㎏
エンジンコンチネンタル C-90-12F レシプロエンジン(95hp)単発
最大速度150 km/h
航続距離640 km
上昇限度高度3,000 m



今回で2回目の一式双発高等練習機の見学となりました。また今回の一般公開では新立川航空機(現立飛ホールディングス)がかつて製作した2機の軽飛行機、R-53、R-HMの見学も同時に行うことが出来たため、とても有意義かつ充実した時間を過ごせたように思います。


●一般公開の案内(1) ●一般公開の案内(2)

なお一式双発高等練習機の一般公開イベントは今回が最後の予定だそうです。もう見ることは無いのかも知れませんが、また何かの機会に見学できることをぜひとも期待したいと思います。







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